フェイクニュースとしての地下室TIMES

「地下室TIMES」をご存じだろうか。

地下室TIMESという音楽ウェブマガジンがある(正式にはBASEMENT-TIMES)。主に日本のインディー系ロックバンドを扱うウェブマガジンで、毒舌っぷりとメタな視点で有名だ。いま適当にページを開いて目についた記事タイトルは「インタビュー!東京カランコロンの悪口を書いたらご本人に呼び出されました!」だとか「でたまた唯一無二の世界観!バンドプロフィールの画一化!」だ。こういうセンスゆえにいわゆる炎上騒ぎも起こしていて、 とりわけライター石左氏の記事には色々と定評がある。僕個人としては、ロックファンとしてはこれぐらいのお行儀の悪さがあっても全然いいと思っていたし、僕も曲がりなりに音楽について文をしたためる趣味があるので多少なりリスペクトもあった。

ところが、先日話題となった石左氏の記事は見過ごせないので、リスペクトを過去形で書かせてもらった。その話題の記事とはK-POPなんかよりも、台湾の邦楽ロック"透明雑誌"を聴いてほしい。というもの。雑に要約してしまうと「透明雑誌という台湾のバンドがあって、日本のバンドに影響を強く受けたサウンドがすごくかっこいいし嬉しい」「いっぽうK-POPは外貨を目的にやっているいびつなもの」「それならK-POPよりも台湾の親日バンドを応援したい」というようなことが書いてある。

これに対して嫌韓で国粋主義的だという批判が出てるようだが、僕はそこまでウヨってるとは思わない。そりゃ日本愛が強い海外バンドが出てくりゃ応援したいに決まってる。音楽とはお互いのコミュニティを確認しあうツールとしての側面があるのだから、日本人が日本らしい音楽を好きになるのは自然な事だ。だいいちロック系のウェブメディアが「TWICEを聴け!」みたいなこと言ってたらキモいと思う。

だがしかしだ。この記事には、事実の認識に基本的な誤りがある。 そしてその間違え方は、韓国disや台湾ageとなると現状認識が狂ってしまうネトウヨまとめブログと重なるのだ。

透明雑誌はカッコイイから話題になったわけじゃねーぞ 

記事では、透明雑誌をこう紹介している。
透明雑誌は日本でちょっとだけ話題になった。何故か?それは聴けば一発でわかってくれると思う。

単純に、かっこいいから。

プラス、これが台湾からやってきたというのが衝撃だった。邦楽じゃん、ナンバーガールじゃん、と。海の向こうに別の日本があった感じ。
これだけ読めば、完成度の高いロックバンドが台湾から来たことが話題になったかのようにも読めるだろう。しかし、実際にはそうではなかったように僕は記憶している。なにせ「透明雑誌という名のバンドが性的地獄という名の曲を演奏している」事実だけで、日本のロックファンからすればあからさまなナンバーガールのオマージュとして受け入れられる。"聴けば一発で"分かるのではなく、"聴かなくても一発で"分かったのだ(※知らない方向けに解説すると、2000年頃に絶大な影響力を持ったナンバーガールというバンドが居て、代表曲が"透明少女"であり、また他には”性的少女”とか"YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING"という曲がある。)。曲を聴いても「単純に、かっこいい」かと言うと、PVをみれば分かるのだが、「ナンバーガールのコピーバンドやってる大学生がその延長で作った自作曲」みたいな微笑ましさが強い。
 
(もろEight BeaterとYARUSE NAKIO の BEATやんけ!(歓喜))

実際の当時のCDレビューを見ても明らかだが、ナンバーガールの二次創作だからこそ話題になったし、台湾からの逆輸入ゆえにパチモノ臭さがかえって好意的に受け入れられたのだ(アジア人歌手の”パチモノ日本”臭さを愛でるのはアグネスチャンの時代から変わらない)。少なくとも、いきなり「単純に、かっこいいから」と断言できてしまう存在かというと極めて疑問である。例の記事は、透明雑誌が”超親日の日本テイストバンドの旗手”だからと言って、なにかおかしな文脈づけをしてはいないだろうか。というか音楽レビューにあたって「単純にかっこいい」って表現はちょっと…

韓国の文化史に対する無知

 また、記事中では、K-POPが日本でも席巻してることをこう非難している。
音楽的に興味ない国にガンガンに商売として国ぐるみでアイドル売り込んで、まんまと聴かされてるのは本当にどうかと思うわけです。
韓国人は音楽的に日本への興味がないと石左氏は思っているようだ。確かにその可能性は高い、が、その前提として韓国では日本の音楽試聴に法的な制限があることを忘れてはならない。韓国では2004年になってはじめて日本の音楽CDの流通が解禁されており、いま現在においても日本語の歌詞テロップがテレビで流されることはないという。かつての歴史的政治的な陰がいまだに国家制度の中に落とし込まれている以上、音楽業界をくさしても意味がないのだ。

つまり韓国において日本の音楽が受け入れられないのは必然なのだが、相手文化への無理解ゆえに論点がすり替わり、「好意的な感情」や「消費しあう仲」の欠落を過敏に感じ取って攻撃するスタンスが生じてしまっている。

日本の3次元アイドルの話をするんだ!!!

「どっちもどっち」な話は建設的ではないと思いつつも、日本でK-POPを売ることを「イギリスから下ろされたアヘンを国内に流通させてた中国人とやってること同じ」とまでコキおろすならば、フェアを期すために言わせてもらわなければならない。じゃあJ-POPはどうなんだ、と。

日本の芸能界の病気っぷりのほうが悲惨だ。韓国がアヘン戦争ならば、日本はWW2レベルだろう。丸刈りになった峯岸みなみの姿はまるでアウシュヴィッツに収容されたユダヤ人女性のようだった。それならば秋元康はさしずめアイヒマンといったところか?SMAPが謝罪したあの日、木村と中居の立ち姿はまるでマッカーサーと昭和天皇のそれのようだった。その後の分裂をもたらす闘争はさしずめ米露冷戦か。ロックバンドだってGLAYやらAqua Timezも僕からすれば同化された原住民みたいに映る。

少なくとも、K-POPが特段病んでるわけではないのは明らかである。それでもわざわざ言及するのであれば、何らかの意図があると勘繰られても仕方がない。
(追記:…などとブログを書いている間にK-POPアイドルSHINeeのメンバーが自殺したことが報じられていた。ご存知の方も多いだろうが、韓流芸能人の自殺事件は少なくない。やはり韓国には韓国の病み方があるのだろう。日本でのK-POP流通のあり方まで病気だと言えるわけではないので、記事中の指摘は言いすぎだという認識は変わらないが、一部訂正させていただく。)

(当初のAqua Timezは場違いにもメタル向けの機材を使っている時期がある)

フェイクに侵されてるのは読者じゃなく書き手だ

以上、いくらかツッコミを入れた。繰り返しになるが「K-POPよりも、台湾発邦楽ロックを聴いてほしい」という感情は常識的なものだ。この記事も恐らくそういう性質のものであり、右翼的な目的があるとは感じない。また、彼ほどに音楽を論ずる素質があるならば僕が指摘した内容くらい言わずもがな知っていただろう。にも関わらず、何かが彼の思考の歯車を止めて、逆回転させてしまったように思う。

この記事の問題点に気づいた時、僕は最近ショックを受けたニュースを思い出した。先日『ニュース女子』という報道バラエティ番組が「重大な放送倫理違反」を犯したとしてBPOに警告を受けたのだが、一部メディアが「BPOは『ニュース女子』 の姿勢に対して一定の理解を示している」と報じたことだ。というのも、BPOは「民主主義社会における放送の占める位置を脅かすことにつながる」とまで非難しているので、普通に考えれば有り得ない読解である。何らかの政治的意図があるというだけではもはや理解できないほどに倒錯してしまっている。自分が吐いてきた言葉に溺れ中毒死する記者に、僕は哀れみさえ覚えたのだ。

作家の佐々木中がインタビューでこんなことを言っていたのを思い出す。
文字は人類史規模ではほとんど最新の武器ですから、取り扱いには注意が必要なのです。使い方を間違えて振り回すと自分の身を切ることになりますよ。
インターネットな僕らは今、大量の文字の中で生きている。大量の文字を産み出している人たちもいる。 石左氏はそのなかのひとりであり、それゆえに自傷を起こしているように思えてならない。

きれいごとかもしれないが、音楽を語る言葉はキズ薬であってほしいと僕は思っている。願わくば、自らも含めすべてを癒す薬であってほしい。

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